想園
精神科看護者の実感/美しい目
山下 銀蔵
1
,
森下 安子
2
1厩橋病院
2京都市国立宇多野療養所
pp.69-71
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913509
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心と体の健康が,人間の生活にどんなにか大切であるか知らない人はないだろうが,では精神衛生とはどんなものであるか,となると何か面倒な直接関係ないもののように,理解の外に追いやってしまう。何故だろうか。体験してない者からくる無関心さであるのか,関係してない者から見る距離のへだたりであるのか,それをいう私にもわからない。だから精神衛生の一連につながる精神病院に,かりにレンズを向けて見たらどうだろうか。きたない,こわい,近づけない,意識のどこかに潜在する何かが,あなたの視野を勝手に脚色してはいないだろうか。そこにいる精神障害者になんのちゅうちょもなく近づいて優しく話しかけてくれるだろうか。専科のちがう私たちにそんな注文を出しても無理でしようと答える人もあるだろうし,とんでもない,看護という共通の広場に生きる私たちに失礼もはなはだしい,と反発してくる人の方が多いことを私は期待している。
先日もある雑誌で有名な評論家が気ちがいに刃物というが,運転にアルコールの警句も加えねばなるまいと,こんな書き出しを読んだことがあったが,著者の知性を疑うのも私の自由である。とくに精神病院は人間を拘束するだけの場所ではなくなつてきている。心の病いをいやして再び社会に帰ってもらう明るい治療の場所に変ってきている。
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