看護の潮 老人を考える
社会福祉における老人の問題—老人の所遇について
塚本 哲
1
1東洋大学
pp.33-35
発行日 1967年12月1日
Published Date 1967/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913433
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文化の水準をはかるもの
一国の文化を判断する場合に,その国の生産が著しく伸びていたとしても,それだけで文化の水準が高いとはいえない。むしろ最底辺にある国民の生活状態がどのような状態にあるか,つまり所得や文化の享受において受けるところがあるか,それとも一応充たされているかという点に重要な尺度があるのである。
人間は自らの力で生産に関与し,自ら享受するという関係において生活することが普通であるとすれば,もはや生産関係から隠退し,自らの力で生活を維持することが困難となった老人に対しては,家族が扶養するか,社会が配慮するということになる。しかしわが国の現状では,扶養する家族の能力も人によって格差があり,能力に乏しい場合は,社会的配慮による部面が増大せねばならないのである。したがってそれがどのように実施されているかということが,その国の文化をはかる一つの尺度となるのである。過去の歴史にみても,一般にその社会の生活資料が一応充たされている場合は,老人の所遇も充たされていることになるが,乏しい場合は心ならずも棄老というようなことが行なわれてきた。してみれば,人間が老齢になれば,一般に社会的弱者の立場におかれるということを意味する。とりわけ肉体的,精神的に不健康な状態にあるとすれば,一層その度合が惨めなものになるのであって,これに対する周囲の配慮が一層必要になっていくのである。
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