看護の潮 ゆたかな人生への出発
看護人生相談—あなたの心の糧に
学生運動/社会活動のウォーミング・アップ
いいだ もも
pp.26-27
発行日 1967年3月1日
Published Date 1967/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913066
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人命を守りたいという欲望
《私の生活と意見》のなかで,たまたま私が読んだ2つの意見が対照的である点で,私の興味をひきました。「看護婦は医療労働者である」という当然の前提の上に立っている島本喜美子さんは,「聖職」「奉仕の精神」「博愛の精神」というような在来の看護婦イデオロギーに激しく反発しています。これに対して(といっても,たまたまそんなぐあいに並んだのでしょうが)鈴木千恵子さんは「大切な人命を守る看護者」は「欲望の目的で患者を犠牲にして」しまうことはできないと,「与えられた使命」「精神」を強調しています。この2つの現場からの意見は,看護学生が将来えらびとらなければならない看護婦イメージを,いわば典型的に示しているものといっていいでしょう。
まるまる5年間ほど「患者」であったことのある私は,にもかかわらず,鈴木さんの意見のほうに一般的には共鳴します。なぜかというと,私の病床体験からして,患者の第一義はほかならない「大切な(私のものであるがゆえになによりも大切な)人命を守りたい」という「欲望」に発しているからであり,そのような《私の欲望》に欠けている人はほんとうには他人の「大切な人命」も守れないのではないか,という気がするからです。
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