医学と看護2月のテーマ
人工肛門
西村 光郎
1
1虎の門病院腹部外科
pp.65-70
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913041
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はじめに
数年前アメリカから持参された人工肛門用のChiron型ペロッテを見て,アメリカでは,これだけ親身になって人工肛門を持つ患者のためを考え装具の工夫,改良に努力している医師があるかと感心したことがある。
事実われわれが,過去に種々のペロッテを業者より購入着用した患者たちのいずれもが不満を表明している例に幾度か遭遇していたからで,これら不完全なペロッテを着用して一歩家庭外に出た際,何ら排便感覚のない人工肛門より下痢便があふれ出た時の患者たちの狼狽・失望は想像を絶するものがあるにちがいない。原疾患であり重症である直腸癌,潰瘍性大腸炎の困難な手術を終わり人工肛門または回腸瘻を造設し終わった医師たちは,患者の一命をとりとめた安心感で,退院までの間の排泄物の処置はナースにまかせたきりで,退院後の患者の社会復帰に際しての不安を親身に考えず,多忙な日常の診療なり,より重大と思われる研究に戻って行く。結局患者自身が困難からの脱却のため知恵をしぼって,Chiron型の前身であるKaenig-Rutzen*貼付式ペロッテが出来上ったといわれている。
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