戦後20年記念「ナースの手記」佳作一括収録
3 満州引揚げ前後
牛尾 千歳
1
1厚生中央病院
pp.94-95
発行日 1966年8月1日
Published Date 1966/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912850
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●目をそむけてはいけない
眠れぬ今夜もこの寄宿舎の横を走る山手線の長い車輪のひびきが耳に鳴る。そしてそれはいつも昔の私を想い出させる。
〈戦後20年〉今年の8月15日終戦記念日は,日曜日と重なって,数々の番組<昔のフィルムなど>がテレビに映された。その朝新聞のテレビ番組をみながら私は“イヤダナァ,今日は昔のフィルムがずいぶん映る”というと,同室の友人はあなたはいつもダイヤルを切り換えてしまうけど,目をそむけることはないと反問した。映画,テレビ,小説,すべて戦争というものに私は目をそむけるようにして20年を過ごしてきた。この間も,戦争映画に誘われてとうとう見にいった帰り,コーヒーを飲みながらの雑談にションボリした私に友人たちは,やはり刺激は大きすぎたのかなといったけど。
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