ナースのための臨床薬理
薬剤,ことに新薬の毒性
橘 敏也
1
1聖路加国際病院内科
pp.4
発行日 1966年4月1日
Published Date 1966/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912685
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薬剤が広く臨床用途に供せられる前には,必ず一定の規格にかなった毒性検査が行なわれ,毒性についての一応の毒性が明らかにされ,臨床用途を保証された上で,皆さんの前に現われる仕組になっている。だからその薬剤に添附された説明書を読んでその指示に従う限りにおいては安全性は保証されたかのごとき印象を受ける。事実大部分の場合,その毒性試験が教えたことを守って使ってさえおれば,毒性に関する限り安全であるようである。このことからも従来の毒性試験が役立ち,将来も必要なことは間違いのないことと思われる。
しかし問題はこれで十分かということである。いやいや決して十分とはいえない。むしろすべて不十分なものといわざるを得ないというのが現状である。それは近ごろの幾多の薬禍事件をみてもわかる。ペニシリンショック,サリドマイド禍,解熱剤のアンプル禍などあげればきりがない。例外というにはあまりにも多すぎる。これらの事件を一体従来の毒性試験がどれだけ教え,予測したかといえば,これらのことに関する限り全く無力であったといわねばならない。
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