日本看護史の旅
極楽寺(鎌倉)
石原 明
1
1横浜市大
pp.1
発行日 1966年4月1日
Published Date 1966/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912684
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明治前のわが国で最も大がかりな救療事業をした僧忍性(1216〜1303)は,鎌倉幕府第6代の執権となった北条長時とその父重時の請いにより,鎌倉の西方に極楽寺を開いた。そして多年のプランを実行に移して境内に多くの施設を作り貧しい病人や,世人の嫌うハンセン病患者を収容して救済した。その後さらに北条時宗の援助によって,山をこえた東の谷間の桑が谷に広大な療病所を建て,20年間に6万人もの病人を救ったという。
極楽寺は,いまはひっそりとした小寺であるが,ここの山門から本堂に行く道は私は大好きだ。門の暗い中からパッと明るい境内は,春は桜が,夏は青葉に,秋は紅葉,冬は枯れた梢の下に何百年の間に何万人かの足が通ったであろう磨滅した石畳が続いている。雨上りのあと,石畳の水たまりに青空と白雲の映えた時にめぐりあわすと,まことに俗塵が洗われる。
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