特別講座
頭部外傷—救急医療を中心として
佐野 圭司
1
1東京大学(脳神経外科)
pp.32-38
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912626
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頭部外傷はなぜ国家的な問題か
頭の外傷というのが最近大変問題になっております。頭の外傷はことに都市で発生することが多く,従って都市の病院で扱われることが多いのですが,いかにこれが大きな問題であるか。厚生省の死因統計では,1万9000くらいが毎年頭部外傷で死んでおりますから,癌の10万や脳血管障害の15〜16万に比べますと,そんなに大きな問題ではないようでありますが,実はこの背後には非常に大きな数の負傷者がひそんでいるわけです。大体この数年間は平均しまして,年間50万人の頭の外傷,そのうち1万8,000から1万9,000が死んでいるということになっております。
東京都では,大体年間4万5,000ぐらい頭の外傷があって,1,500から1,600の死亡者があるという統計であります。ですから死亡者の数だけから考えますと,そう大した問題でないようでありますが,その背後にひそむ負傷者ということから考えますと,これは非常に大きな問題でありまして,日本人は年間200人に1人は頭を打つということになります。
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