連載 プラトンからはじめる教育学入門・5
意欲と人格の形成(2)―欲望と5つの類型
山口 栄一
1
1玉川大学教育学部
pp.1016-1019
発行日 2007年11月25日
Published Date 2007/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100814
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人間観察なしでは教育は語れない
どのような人を育てるのかを考えるためには,人がどのようなものかを知ることがポイント。だから,教育心理学は教育方法の基礎と位置づけられるのです。よく考えてみれば,教育心理学研究は仮説を検証するものですから,どこかで仮説が生まれなければなりませんが,その仮説を生み出すのは,研究者の経験に裏打ちされた直観や洞察にあると言えます。教育方法の選択が教師の経験に左右されるのと同様のことです。直観(対象についての仮説)を導くことと,直観を確かめることとは異なります。直観を他者に説得する術がなく,力み,かえって学生をおどすだけでは横丁のご隠居と変わりませんし,すぐれた洞察なくしては研究も他者の後追いになるだけです。
ところで,教育は人間を相手にするのですから,その直観の根拠は人間観察となります。そうなると,教育学者ではないはずのお釈迦様やプラトンなどがどんなにすごいかということがわかります。日本の文化も,仏教なしでは語れません。プラトンがいなければ,後世の哲学も違ったものになっていたかもしれません。みんな,これを教育と意識せずに学んでいるんですね。これらは考えを深める手かがりを提供しているからこそ,教育的なのです。
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