看護婦さんへの手紙
看護はひとつの文化
羽仁 説子
1
1自由学園
pp.9
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912106
- 有料閲覧
- 文献概要
私は,小さいときからからだが弱く,幾度も重病にあえぎ,四度の出産まで加えればどれほど看護婦さんがたのお世話になったかしれません。お名前を忘れてしまって,お顔だけおぼえているおかたにも,深い恩を感じています。また,ひとりの女性として,婦人問題の研究者としても,女性のもっとも古い職業である,看護婦さんがたの社会的地位の向上を祈らずにいられません。
ところが,最近,聖職とか天職とかいうことばに抵抗を感ずる,若い看護婦さんたちがふえています。いままでは,ひとが病気になるという,社会的矛盾を,看護婦さんの犠牲でかっこうをつけようとしていたのです。病人もまた,いままでは病気を直す希望よりも諦めのほうが多かったのですから,せめて看護婦さんの笑顔をみて救われるという程度であったかもしれません。しかし,現在は,医学がすすみ,病人は直ろうとあせっています。看護婦さんの役割は,飛躍的に,大きく重要なものになっているとおもいます。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.