medical topics 医学の話題
不燃性眼帯,他
K
pp.88-89
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912026
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日常の診療によく使われているごく些細なものが災の種となって意外の大事を引きおこすことがある。たとえば眼科で使っている眼帯。これがセルロイド製であったため入院中の患者さんが顔に大ヤケドをした事故が,この5月,横浜で開かれた眼科集談会の席で関東逓信病院から報告された。手術後に天井をむいたまま煙草をすっていて,その火が,たまたま眼帯の上に落ち,それで燃え出したものだが,患者さんだけを責めることはできない。それよりも何故もえやすいセルロイドを眼帯の材料に使っていたのかが怪しまれる。樹脂化学,ビニール化学の発達した今日では,日常のあらゆるもの,写真のフィルムや子供の玩具など昔から燃えやすいものの筆頭にあげられたものまで,みな不燃性のものへとかわっている。眼帯だけが旧態依然として危険なセルロイドを使っていたのは,眼科医の目が眼帯でかくされていたものか。
関東逓信病院では,この苦い経験からいろいろと材料を考えて不燃性の眼帯を作り出した。材料はポリ塩化ビニールとゴム系統のA. B. S. 樹脂(ハインバット)の共重合体で,この眼帯は色調,感触,可撓性などの点でも従来のものに劣らず,マッチの火をつけても全く燃えない。
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