名詩鑑賞
ギリシヤ抒情詩—サツポー
長谷川 泉
pp.55-56
発行日 1950年11月15日
Published Date 1950/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906754
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ギリシヤの文學は紀元前800年以前に完成したホメロスの叙事詩以來,今日にいたるまで續いている。しかしながら,我々がふつうにギリシヤ文學と呼ぶ場合には,現在のギリシヤ文藝作品をさしてはいない。それは古典時代の文學に限定される意味において用いられているからである。それほどにギリシヤ古典の文藝作品は光彩をはなつていることを認めざるを得ない。
すぐれたギリシヤの古典文學の中でも,とくに愛すべき作品は抒情詩である。これは民衆の間に發達した歌謡が竪琴の伴奏によつて文學的に高い結晶をしめし,主としてレスボス島の人々の間に,獨吟の歌として見事な開花を示したものであつた。紀元前7世紀におけるアルカイオスやサツポーは,その代表的な詩人であつた。なかでも女流詩人サツポーはギリシヤにおける最もすぐれた詩人のなかにかぞえられた。十番目のミユーズとほめたゝえられたのもそのことを物語るものである。
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