特集 こういう看護を何故すべきか
皮下注射
向窪 雅子
1
1広島赤十字高等看護学院
pp.152-155
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910213
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注入された薬液はどうして吸収されるか
これは皮下組織に注入されることにより組織液と混入して血液中に吸収されるのであるから先ず体液の移動について考えてみます。
これには濾過と,拡散の二つがある気体以外の物質は,凡て水に溶けて体内に取入れられ,濃度の異る体液又は,気体を混ずると,全体が均一になるまで,気体又は液体の分子は運動する。これを拡散と云い細胞内で液体が混じ合う時みられる。ところが拡散作用が隔膜でさえぎられつゝ起る場合には,これを滲透と言う。今水の分子は,自由に通すが,糖分子は通さない様な隔膜で,水と糖液を仕切ると,水分子のみは,隔膜を通して糖液中に入りこむ。此の隔膜は,水の分子を通過させるのみで,一方的の性質をもつている丈であるから,半透性膜と云う。細胞の原形質の外部即ち原形質膜は半透性膜の性質をもつていて,或る物質は通過させるが,或るものは通さないと云う性質をもつている。然し此の性質は自由に変化させる事が出来る。従つて細胞は,滲透作用によつて,必要な物質を取り入れ拡散によつて各部に伝え,又他の細胞へ滲透によつて物質を転移させる事が出来る。こゝに滲透圧の異る溶液を応用すれば,溶液内の成分と,細胞内成分とは,その分圧の差によつて或は細胞内に入り,或は細胞外に出る。従つて注入された薬液と組織液との両者の成分は細胞膜を通して互に滲透してこゝに細胞成分の変化を起し,作用を発現する。
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