研究
確実な皮下注射・筋肉注射に関する一考察
半田 聖子
1
,
大串 靖子
2
,
今 充
2
1旭川医科大学病院
2弘前大学教育学部看護学科教室
pp.291-298
発行日 1981年10月15日
Published Date 1981/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200671
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Ⅰ.緒言
看護技術の中には,その原理について理論的根拠の明確でないものがまだかなり多くあるが,筆者らは与薬の方法として,医師の指示に基づいて,日常,看護婦が行なうことの多い皮下注射,筋肉内注射(筋肉注射と略す)の手技について疑問をもった。
皮下注射とは,皮下脂肪内に薬液を注入し,主にリンパを介して薬剤を吸収させ,筋肉注射は,筋肉内に薬液を注入し,主にそこに分布する毛細血管へ直接薬剤を吸収させることによって治療効果を得るものとされている。皮下注射と筋肉注射は使用される薬剤のもつ成分・性状や注射部位の吸収力等が異なり,厳密に区別されるべきものであるが,臨床場面では,筆者らの経験からも,手技,特に注射針の刺入の深さが明確に区別されていない。皮下注射,筋肉注射の手技については多くの国内外の成書に記載されているが,注射針刺入深度について明示されているものは見当たらない。単に注射針の長さの「2/3まで」とか「全部は刺入せず」という規定のしかたでは,特に皮下脂肪の厚さのように,個人差の大きい組織への確実な注射は期待できず,皮下注射が筋肉注射になったり,その逆になっていたりする可能性が考えられる。本研究では,注射部位の皮下脂肪の厚さ(以下,皮脂厚と略す)を測定することによって,少しでも理論的根拠に基づく,確実な皮下注射,筋肉注射のための,注射針刺入深度について考察した。
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