Student's page 東京衞生病院看護学院
実習
森 英子
pp.34-36
発行日 1956年3月15日
Published Date 1956/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910082
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6時半礼拝を終え朝食をつめ込んで朝の静かな町を急ぐ。毎朝毎朝……。通学者と通勤者の両方を混ぜた様な気分で,満員電車,文字通りの,寿司詰め電車がふくれた様に見えるのは眼の錯覚か,見たくもない人の背中を降りる迄眺めるのは未だよいが見知らぬ人と面と向つて,押しつけられたのでは眼のやり場所もない。体が30度位傾けばそのまま次の駅迄運ばれる。片足一寸持ち上げたら今度下ろす場所がないと云つた具合である。3ヵ月間我々3年生10名の者は伝染病,結核,小児科,保健所実習の為豊島病院,大久保病院,愛育病院,指定された保健所にそれぞれ出かけたのである。
東上線大山駅より数分の所の豊島病院にて,清潔区域と不潔区域を下駄ばきで歩いた事も今では思い出となつてしまつた。始めて見る伝染病,臨床実習が如何に重要なものであるかと云う事を痛感させられた。狸紅熱,赤痢ヂフテリアなどの急性期を過ぎた子供達とよく遊んだ。私共のユニフオーム(青い縞服と白エプロン,キヤツプにも斜めに黒線が2本ついている。2年生は1本,1年生は線がない)がめづらしいらしく何度か子供達に説明せねばならなかつた。医師の廻診につく事はいろいろと勉強になるが質問が飛んで来るのでいさゝかヒヤヒヤである。かの満員電車で一通りノートを見ておいた事なら悠然としたものであるが……。
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