病床児慰安実技講座
お話とお遊び(7)
粟津 実
1
1児童文化財研究所
pp.54-59
発行日 1955年9月15日
Published Date 1955/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909916
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工作コース
大人も病気をすると,退行現象があらわれるが,子供のそれはいちじるしい場合がある。しきりに母の胸を恋しがつたり,夜尿症があらわれたり,乳児のように指を吸つたり爪をかむ子もある。病床にあつて玩具も何も与えられない時,遊びの対象となるもの,慰めとなるものは自分の指である。美女が自分の指をじつと眺めている風情などは実に艶であるが,病児がやせ細つた指など見ていると,親達は余命いくばくも……といつた心に泣かされるであろう。しかし考え方によつては指ほど人の心を慰めるものはすくないともいえる。シヤムの舞踊や,仏像の印相を引張り出すまでもなく,指が描き出すジェスチュアはそれこそ千変万化である。指の遊びは工作でないかもしれぬが,工作は指の遊びでないとはいえない。私の紙工作の著書の名には“指のすさび”というのがある。紙も糊も鋏もいらない講成,其処に指遊びのナチュラルな面白味がある。
では今月の講座は,おもむきをかえて指遊びについて講述することにする。最初にあたつて,これが効能をあげるとこうだ。
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