病床児慰安実技講座
お話とお遊び(1)
粟津 実
1
1児童文化財研究所
pp.50-55
発行日 1955年3月15日
Published Date 1955/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909776
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病児保育 病は気からというが,純真無垢な幼小児に対しては,彼等を看護する父兄母姉の一言半句も,喜怒哀楽の因となつて,白紙に墨筆をふるうように,ひしひしと心に迫るものがある。まどかな美しい曲線が描き出されるかと思えば,刃をつきつけられたような鋭角や,投げつけられたような筆のあと,糸のような悲しい線もあれば,今にも光明をはなつかと思われるような喜悦の躍動,それを思うと,看護を天職とする,又職務とする諸姉は,幼児教育にたずさわる幼稚園教諭や,保育園に勤務される保母諸姉に比べて,勝るとも劣ることのない『病児保育』の手腕とマコトを持つておらねばならないと思う。
『病児保育』それは私の新造語ではあるが,大人とは違つて,ジエツト機のようなスピードで,日々伸びていく幼児を考えると,病床の数日もまた貴重な保育の『場』である。看護婦の養成機関である看護婦学校は,保母の教育が目的でないことは分るが,教養科とでもいつた科目において,又選択科目として,もつともつと児童心理や精神衞生の講義があり,私の主唱する『病床児慰安実技』の実習もあるのが理想だと思う。理想は理想として見送つてはならない。現実にソレを生かしてこそ社会の向上があり,人間としての生甲斐があるのだと考える。
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