病床児慰安実技講座
お話とお遊び(3)
粟津 実
1
1児童文化財研究所
pp.45-49
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909833
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—童話コース—
病める児は淋しいのだ,そして気がいらいらしているのだ,その2つを我儘で消そうとしている。子供ながらに医師を敬い,母姉の心痛をおしはかり,看護婦の親切が身にしみる日もあるのだ。だが小さい心のなやみは,生理的な苦痛に上廻る。心の苦悩をしずめるには,子供の力はあまりにも弱過ぎるのだ。
病床児の気持は,かつて子供だった頃,病床に臥して,その実態を心深く刻みつけた者でない限りは分らない。沢山な色糸をもつれかしたようなあの気持,どの糸からひけば解けてくれるのやら,強くひけばむすぼれは一層かたくなるし,ぷつつり切れる心配もある,といつて其のままにしておく心のゆとりもなく,心の糸のもつれを,どのように表現すれば大人の人は知つてくれるだろうか,そのすべも知らずに,白いベツドによこたわる病児の心境,幸にも私は少年時代に病気のデパートを一巡してきたので,この講座を担当するにしても,病慰運動の旗手としてもふさわしいように思つている。
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