講座
性病と世相
小原 菊夫
1
1前東京都衛生局性病課
pp.18-22
発行日 1955年9月15日
Published Date 1955/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909908
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昔は性病のことを花柳病といつた。昔といつても,公式に法律用語として,性病ということばがつかわれ出したのは,昭和23年7月に性病予防法が公布された時からだから,まだ7年にしかならないのである。学術用語として,性病ということばが用いられたのはもつと古いのであるが,今日でも,花柳病ということばをつかつている人が相当いる。ことに年配の人たちの間には。
花柳病というのは,花柳界にある病気,花柳界に出入することによつてうつる病気ということである。この花柳の巷ということばは,李白の詩「昔在長安酔花柳五候七貴同杯酒」から出たということで,かなり古くから用いられていたらしいが,今日4種ある性病を予防医学的に一括して,花柳病とよんだのはそんなに古いことではあるまい。恐らく,西洋医学が輸入された当時,morbus venereusの翻訳というより,それに相応することばとして,日本医学界の先輩たちが,このことばを用い出したのであろう。
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