社会の動向
責任回避の世相
長谷川 泉
pp.50-51
発行日 1960年2月1日
Published Date 1960/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201857
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人間の社会は人間が作つたものである.自然にある山や川や,そしてまた,そこにある樹木や石ころのように,それが人間に都合が悪いからとか都合がよいからとかいつたような意志に関係なく存在しているものとは性質が違うのである.
したがつて,人間の社会は,人間がその中に住みよくするように変えてゆくことができる.その場合に,ある特定の人にだけ都合がよくて,ほかの人には都合が悪いような社会では困るから,なるべく多くの人がその社会の中にあつて幸福であり,生き甲斐を感じられるような社会にするように心がけるのである.かりに,現在の時点においては,多少は都合が悪くても,そのような状態を少し我慢をすれば将来はすばらしくよくなるという可能性のある場合には現在を犠牲にして将来にかけて,よりよい社会を築き上げようと努力することもあるだろう.いずれにしても,ある特定の人だけに都合がよいような社会ではなく,その社会の構成員の多くが幸福を享受し,そして皆に都合のよいような社会を築きあげようと努力するものである.
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