2頁の知識
放射線障害とは
山下 久雄
1
1慶大医学部
pp.50-51
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909834
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放射線のうちには赤外線や超短波などの如く,単に熱作用のみのものもあるが,電離作用を呈する放射線は,生体に対して破壊作用があり,或限度以上に及べば何等かの障害が起る。斯かる放射線には種々のものがあり,エツクス線やガンマー線の如き電磁波もあれば,ベーター線,電子線,中性子線,陽子線,アルフアー線などの如き微粒子線もある。紫外線やベーター線などは透過性は余りないが,ガンマー線,エツクス線,中性子線などは透過力が強い。従つて,之等のものを一様に論ずることは出来ないが,生体反応には類似点が多く,例え透過性が少くても,体内で照射されれば著しい障碍を来すことになる。
自然界で強力な放射線を出すものにウラニウムやラジウムの如きものがあるが,その様なものに近ずかねばその危険はない。天然のカリウム中には微量(0.01%)のK40があり,ベーター線を放射しているから,動植物体内にも極く微量の放射能はある。宇宙線といつて,太陽その他の恒星から地球に飛んで来る放射線も相当にあり,吾々は毎分数百個の放射線に当つているのである。然しそれだからといつて,そのために放射線障害を来すことは先ずない。或程度以上の線量で,或期間照射されてこそ放射線障碍が現われて来る。
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