特集 ナースのための精神身体医学
精神身体医学各論
関根 真一
1
1国立武蔵療養所
pp.126-138
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909672
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日常診療に従事している医師はいろいろ病苦を訴える患者のうちで,多くはものごとをくよくよ思い煩つたり,絶えずいらいらしたり,ものの考え方が普通でなかつたりといつたような何かしら神経症の症状をともなつていることが事実であり,ときにはそれらが訴えのすべてであることを経験している。そしてこのような場合には,多くは遺伝や環境等になんらかの関係があるように認められるものである。治療の介補をなす看護婦も,この事実は常に目撃して,そのような患者の訴えを幾分でも軽くしてやりたい同情にかられるのである。その医師が患者の神経症的の訴えについての理解がないばつかりに,息者の訴えを軽くあしらつて,悩みの核心に触れないでいたずらにいろいろの臨床検査の結果とか,X線写真とか,心電図の結果とかにとらわれて,診断がつかないで,最後に「気のせい」くらいに軽くかたづけられ,患者に安心と満足を与えられない場合が多いものである。しかしもちろん現代医学の進歩した種々の臨床検査法は軽視せず,充分に利用し,その偉力を信頼し,診断の資料としなければならぬが,医師の目前にいる患者が精神的に悩んでいる場合には,それらの検査法だけに頼つていては患者の心の内まで知るわけにいかぬものである。
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