特集 最近の医学の話題
精神身体医学
土井 正德
1
1最高裁判所
pp.14-15
発行日 1956年8月15日
Published Date 1956/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201709
- 有料閲覧
- 文献概要
I.精神身体医学とは何か
職場や学校で,胸苦しくなつたり目まいがして倒れそうになつたり,或いは倒れたりしたならば,脳貧血だといつて医務室にすぐ連絡するにちがいない。もし倒れたそのとき痙攣をおこすようなことがあれば「てんかん」と思うかも知れない。また急に腹痛を訴えたり,急に下痢を訴えたりするものも珍しくなく,そのときには胃炎だとか腸が悪いらしいということで,応急の手当をあたえたのち,自宅に送りとどけ,さらに医師の診療を受けるのが普通であろう。これらのばあい一般に考えられることは,身体あるいは内臓に何か原因があたえられて組織や細胞に病変をひきおこし,そのためにそれらの苦痛がおきたのだろうということである。この人はどうも心臓が弱いらしい,それで脳貧血をおこしたのだろうとか,昨夜何か悪いものを食べたらしいとか今朝何か食べすぎたらしい,それで胃痛をおこしたのだろうとか,あるいは急性の下痢をひきおこしたのだろうとか,すべての苦痛の原因を身体の病変にもとめるのである。それはあたつていることもあるし,そうでないこともある。
つまり,身体の組織や細胞そのものには少しも病変がなくて,苦痛な症候をひきおこしていることが少なくないのである。
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.