特集 精神身体医学(産科)
育児と精神身体医学
岩波 文門
1
1東京医科歯科大学
pp.26-28
発行日 1966年12月1日
Published Date 1966/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203310
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
自分の小児が心身ともに健全に発育するように希うことは親として当然であろう.しかしそれぞれの母子にはそれぞれの個体差があるので希望する目標は同じであったとしても,実際の育児の道程はそれぞれ多少とも相違したところのあるものである.ところがはじめて小児を出産した母親は概してこの認識がない.そして自分の小児をあまりにも理想的に育てようと希い,いたずらに右顧左瞞していわゆる「隣りの花は赤い」式の羨望,さらに焦燥の念に駆られることが多い.ここから過保護の完全性の要求による育児態度に基づく種々の精神身体医学的障害が母子に発現する.
一方すべての小児が親の過保護のもとに育てられるかというと,必ずしもそうではない.現在はむしろ愛情欠除の育児態度に基づく小児の精神身体医学的障害も十分に留意されてよいと思われる.以下乳児期の育児と精神身体医学に関する問題を中心として述べる.
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.