特集 ナースのための精神身体医学
精神身体医学とは何か
村上 仁
1
1名古屋市立大学
pp.122-126
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909671
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精神身体医学とは,一言でいえば精神的な不安や苦悩が原因になつて身体的な疾患が起ることがある,という事実に関する研究である。昔から「病は気から」などという格言があり,精神的な悩みといろいろの病気との間には何らかの関係があるということは漠然と想像されてはいたが,いままでの医学はこのような問題は余りとり上げない傾向が強かつた。つまり,いままでの医学は病気の原因を内臟のいろいろの器官の病理解剖学的な変化にあると考えていたので,精神的な悩みがこのような内臟の病的変化と直接の関係があるとは思えなかつたからである。
1)しかし内臓に病理解剖学的な変化がなくても,内臓のはたらきに異常が起つて病気になることはいくらもある。たとえば,心臓自身には特別な変化がなくても,急に脈が早くなつて苦しくなる発作が起ることがよくある(発作性頻脈)。これは心臓を支配する自律神経の働きの異常によると考えられるが,この場合自律神経に特別の変化があつて,それが頻脈の原因になることもあり得るが,多くの場合は何らかの精神的不安が自律神経のはたらきに影響し,そのため頻脈が起るのである。
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