臨床実験
眼と精神身体医学
服部 知巳
1
1名大眼科
pp.413-416
発行日 1955年3月15日
Published Date 1955/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202152
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病原が主として物理,化学的,機械的刺戟,或は細菌の様な外的原因に依る生体の損傷に対しては,専門的機械的立場より此を診療する事は,何等誤りでないどころか,益々物理的,化学的方法が要求されるであらう。けれども,一度,循環器消化器,呼吸器等の,自律神経系を介して,人間の精神的影響の大きく作用され得る疾患に就いては,診断治療の医学的方法は,もつと視野を拡げて,人間の全体観の上に立つたものでなければならないと考えられる。
1つの疾病の成立には,身体的要因と精神的要因とが交錯していると共に,其の個人の歴史と社会的,経済的要因とが,大きく関連している以上現代の極端な機械的立場に立つ医学によつて病名が与えられ,最新の物理的化学的治療が施されたとしても,尚医学に依つて癒されない病人が,医師より医師え,さうして非医師や迷信に彷徨する現状に対して,単的に患者を非難する事は出来ない。西野忠次郞氏"臨床50年より"の言葉を借りれば,"治療の対称は病竈でなく況んや病名ではない,患者の全身全体にある事に留意"しなければならないのである。
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