発行日 1953年8月15日
Published Date 1953/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909390
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
アメリカ南北戦爭は緒戦において戦況は北軍にはなはだ不利でした。北部各州で募集された兵士達は続々ワシントンに集結し,そこから次々に前線に投入されました。クララ・バートンは或日,マサチュセッツで編成された部隊がワシントンを通過することを聞いて,勇躍前線に赴く郷里出身の兵士達を迎え,送るために駅に出かけました。そうした増援の派兵にもかかわらず,むしろそれよりも多いかと思われるほど沢山の負傷兵が後送されて來,駅にたまつているみじめな姿をクララは目撃したのです。彼等は血のにじみ出た軍服を着たまゝだつたり,何日もまいたまゝの繃帶をしたり,繃帶をしているのはまだいゝ方で,布片で間に合せの止血をしていたり,中にはゲートルで片腕を吊つているのもあるという風で,タオルもなければハンカチもチリ紙も持たない有樣だつたのです。クララはそれを見て,もうじつとしていられません。早速,繃帶や布地や,病人向きの食料や,タオルやチリ紙等の日用品を買い集め,又駅に戻つてこゝに屯している負傷兵達の世話をし,慰め,励げますのでした。それからクララは私財を投じたり,寄附金を集めたりして慰問品を持つて軍病院に出かけて行つて,そこに收容されている傷病兵のために働きました。
勿論クララは看護婦ではありません。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.