発行日 1953年9月15日
Published Date 1953/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909410
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
戰場の天使クララ・バートンは終戦と同時にワシントンに引揚げてきました。そして新聞記者とのインタービユウで「私に戦場の話をしろというのでしたら,北軍の輝やかしい勝利についてよりも,戦場の悲惨極まる実態を話さなければなりません」といつて面を曇らせました。人間同志が何故武器を以て互に殺し合わなくてはならないのでしよう。戦爭は悲惨そのものです。クララはそれを身を以て体験して来た唯一人の婦人なのです。
クララは或日ホワイトハウスに大統領リンカーンを訪ねました。リンカーンはクララ・バートンの勲功を嘉し,よろこんで引見しました。クララは北軍の戦死者が36万と発表され,而もその中軍部の手で埋葬されたのは31万5千だという報告を聞いて,差引4万5千の兵士達は一体どうなつたのか,その点をはつきりしなくては,息子を夫を父を戦場に送つた親や妻や子供達は,何ともあきらめがつくまいから,それを調査するように大統領に建言したのです。大統領はそれをもつともなことゝ了承し,議会にはかりましたが,何せ終戦直後の混乱した世情ではもつと先に処理すべき業務が山積していて,未帰還者の調査までは却々手が及びませんでした。大統領の紹介で,クララは終戦処理を担当しているヒツチコツク將軍と会い,その具体化を急ぎましたが思うようにゆきません。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.