名詩鑑賞
相聞—芥川龍之介
長谷川 泉
pp.34-35
発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907153
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近代作家として説い理智を生き抜いた芥川龍之介に相聞(戀)の歌がいくつかある。全集には相聞と題する三篇があり,相聞三として掲げられているのはここに示したもので,その他は
相聞一あひ見ざりせばなかなかにそらに忘れてやまんとや。野べのけむりも一すぢに立ちての後はかなしとよ。相聞二風にまひたるすげ笠のなにかは路に落ちざらん。わが名はいかで惜しむべき惜しむは君が名のみとよ。となつている。この三篇は相應じて一詩と見ることも出來るがそれぞれに獨立した四行詩として解することの方をとる。それぞれに獨立した詩美を完成しているからである。芥川の相聞の詩には,ここに掲げた「また立ちかへる…」を後聯とした2聯のものがある。それは大正14年4月「誰にも見せぬやうに願上候」とことわつて心の知友室生犀星のもとに送つたもので,次のような初聯と結合したものであつた。
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