編集デスク・31
色紙展のこと
長谷川 泉
pp.47
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904436
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現代文芸家色紙展が西武百貨店であり,求められて色紙を2点出す機会があった。ふだん編集の忙しい仕事をしていると,筆を執って純白の日本紙の艶に清らかな肌に対すると,別世界に遊ぶようなおちついた気持になる。ものごとは対比で考える場合に抑揚が強まったりするから,ふだん忙しい毎日でないと,あるいはこのような感慨はないのかもしれない。
それにしても「文は人なり」ということ以上に,書は人のすべてをあらわすようだ。こまかに見れば,書は生きていて,書かれる文字が,その時々の哀歓をデリケートにあらわしているものであろう。こんなことを言うと,人生の年輪を感ずることになるが,書かれた文字には,あらそえぬ人そのものが息づいているようである。
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