発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907145
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細長い三角形の濃緑色の地に銀色でマークをうき出したのが,私の學校の校旗でした。一年生に入學した時,入學式のお祈りの後で,校長先生が校旗の由來を説明して下さつたのですが,何だかよくわからなかつた中で,たゞ一つ,はつきりと覺えたものは,旗の色濃緑色は「誠實」を表徴するということでした。まことの心の持主になるように,“faithful”な人であるように,靈の育成をするのが目的であると,先生は結ばれました。服部時計店の創設者,服部金之助氏が後世互滿の財を築き,時計は服部の榮名をはせた理由は,氏の人格そのものにあるといわれていますが,それには一つのエピソートがあるのです氏が東京に小さな時計店を營んでいた頃の或日,外國人のお客から腕時計の修理依頼された。時計はスイス製の精巧なもので,到底當時の氏の店の手にはおえなかつたので,氏は自ら部分品を準備し修繕に努力した。客は用務のため時計を殘したまま突然本國に歸てしまつた。氏は客との約束の日時が來ても修繕出來ない申譯けなさに,更に努力を重ね三年を經過し遂に成功したところが相手は既に歸國,そこでその居住を探すのに一年餘を費し,勇躍して時計を叮重なわび文と共に逡つたのは實に預つてから數年後の事であつた。
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