巻頭
總選擧迫る
澤開 進
1
1毎日新聞
pp.1-3
発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907144
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側近派の陰謀
“乞食と代議士を3日やると辭められぬ”ということばがある。乞食はともかくとして代議士の場合をとつて考えてみよう。二當一落(2千万の選擧資本なら當選,1千万圓なら落選)といわれるくらいの選擧資金を使つて,うまく當選して國會にでても,どの政黨にも親分子分あるいは派閥關係があり,それにつながつていないかぎりは万年陣傘代議士で芽はでない,つぎの解散に備えて,たえず選擧區の手當を考えていなければならない。げんに,ぼくのしつているある代議士(保守黨である)なぞは,選擧區の各郡にそれぞれ私設の地方事務所をおき,その事務員から各村々の誕生,結婚,死亡なぞにつき細大もらさず東京の事務所に報告させる。東京の事務所には原簿があり,それと照しあわせると,はゝん,どこ村の誰の二男が結婚したとか,どこ村の婆さんが死去したとかがわかる。そしてそれにしたがつて,弔電をうつたり,なにがしかのお祝いを送つたりするのである。
こんなことまでしてどうして代議士になりたがるのかと思うのだけれども,代議士諸君にいわせうと,こんな面白い道樂はないという。競馬よりも,パチンコよりも面白い道樂が選擧なのである。それはそうだろう,人がきいていようがいまいが,雄辯調で演説したりする心臟は,その心臟をもつている所有者(政治家を志願する連中は,みんなもつている)にとつては,この人生にとつて,またとない快感を催させるものであろう。
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