2頁の知識
みずむし
川村 太郞
pp.18-20
発行日 1952年9月15日
Published Date 1952/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907131
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「みずむし」と言う詞は,言う迄もなく俗語です。俗語は,醫學を特別に學んだことのない一般の人達の間で作られたものですから,症状や原因を嚴密に分析して作られた醫學的の病名と俗語との間に,one tooneの明瞭な對應關係を見出すことは一般に困難です。俗に「みずむし」と言われて居るものの大部分は汗疱樣白癬(Trichophytia pompholyciformis)ですが,「みずむし」のうちで指趾間の糜爛を主とするものには,白癬の他に表在性釀母菌症Coberflächliche Blastomylcose, moniliasis)もあります。又汗疱(Pompholyx)や或種の濕疹など,類似の症状を呈するものなど,總て一般の人には鑑別出來ませんから,皆「みずむし」と呼ばれることになります。患者さんの話を聞いて記録などする場合には,何時もこういう事情をよく辨えて判斷する必要があります。患者さんの言つた詞を醫學的の言葉に無理に言換えようとしないで,「みずむし」「たむし」などと言うようにそのまゝ書留めて置いた方が事實に即した役に立つ記録が出來ます。
次に「みずむし」と呼ばれるものの大部分を占める所の汗疱樣白癬について書いて見ましよう。汗疱樣白癬は,白癬菌と呼ばれる糸状菌の一種が表皮に寄生して起る病氣です。
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