特集 皮膚泌尿器科診療の進歩
皮膚疾患の化学療法
川村 太郞
1
1金沢大学
pp.781-792
発行日 1954年12月1日
Published Date 1954/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201329
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.緒言
細菌性疾患に対する本格的の化学療法が可能となつたのはプロントジール(1932)以後のことである。そして一時全身化学療法剤として使用されたマーキユロクローム,リバノール等は今日では専ら局所療法剤として用いられるようになつた。Trefouel夫妻によつてプロントジールの分子の一半 sulfanilamidの化学療法剤として有効であることが知られてからは,多数のスルホンアミド及びスルホン化合物が合成実用化せられて居るが,諸種の抗生物質の現れた現今と雖もスルホンアミドの発達は猶ほ止まる所を知らない。細菌性疾患中結核のみは一時取残された観が有つたが,プロミン(1940〜41)1)に依つて人結核の化学療法が暗示され,之に引続いて今日迄の間に多数の抗結核剤が発見された2)。又抗結核剤の多くは癩の治療にも応用される3)に到つて居る。スルホンアミドに先立つて発見されて居た(Fleming 1929)ペニシリンは,長い研究期間を経てAbraham及びChain (1941)等に依つて実用化せられた4)。ペニシリンは更にMahoney (1943)に依つて駆梅毒療法に応用せられるや,数年にして従来の砒素蒼鉛療法に代つてそのルーテインとなつた観がある。尤も近時に到つて陳旧な梅毒に対しては砒素蒼鉛の捨て難いことが注目せられて居る。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.