発行日 1952年3月15日
Published Date 1952/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907010
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1.症状の放置
この患者の病状は不潔恐怖症である。この患者のは赤面強迫感で,この患者のは胃神經症である。それぞれの對策はどうだろうかと質問される。ところがこれらの一つ一つの症状は,うわべはたいへん違つているようでも,その發生や經過が,はげしく異る場あいが多い。その發生や經過の面で,人の不眠恐怖症と,べつの人の不眠恐怖との相異はきわめて大きく,人の不眠恐怖とほかの人の強迫失笑症のほうが,ずつとよく似ていることも少くない。
したがつて神經質の症状はさまざまであつても,その對策は炎症にペニシリンを用いたり,化膿切開をしたりするような,きまりきつた公式があるわけではない。症状は千差萬別であつても,その根本には人なみに近い神經質とか,きわめて著しい神經質というような,程度はちがうが,ともかく本質は一筋であるところのものが,一貫して通つているのだ。それであるからある1人が赤面恐怖をもつとか,自?恐怖をもつとかの個々の症状は,ごくわずかな機會や境遇條件の影響であつて,事情をかえれば,まつたく違つた神經症となつて結びあがつていたものである。
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