講座
神經(1)
萬年 甫
1
1東大脳研究所
pp.10-17
発行日 1955年4月1日
Published Date 1955/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200823
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われわれのからだは極めて多数の細胞からできているが,それぞれが皆同じ形と同じはたらきをもつているのではなく,おのおの特長がある.例えばあるものは消化液を分泌し,あるものは酸素とむすびつき(赤血球),又あるものは刺戟をうけると一定方向にちぢむ(筋細胞).そして同じはたらきをもつものは類をもつて集り,皮膚や感覚器,骨格,筋肉,血管,消化管,呼吸器,泌尿生殖器,内分泌系等の諸器官をつくっ.ている.しかしそれだけではまだ生活をいとなむのには充分でない.これらの諸器官がそれぞれ釣合をたもつてはたらくように相互の間を連絡統制する器管が必要である.この重大な役目を負うのが神経系である.そのはたらきが複雑なのと平行して構造もかなりこみいつているが,それを形ずくるものが細胞であることに変りはない.ただ他の細胞とはいささか形が.異つているのである.
神経細胞がどんな形をしているかは昔から多くの人々によつて研究されているが,その結果をあわせて考えて見ると,大よそのことは分る(第1図)。すなわち神経細胞はこまかく枝分れずる数本の短い突起(樹状突起)と1本の余り枝分れをしない長い突起(軸索普通,神経繊維といわれるもの)とをもつた細胞で,細胞体の中にはニツスル小体という粒が見られ.又核は大きく,中央に1個の明りような核小体をもつているのが特徴である.
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