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膀胱神經症について
岡 直友
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1名古屋市立大學醫學部皮膚泌尿器科教室
pp.261-265
発行日 1952年6月1日
Published Date 1952/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200734
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I緒言
膀胱症状を有し,しかも吾人の検索によつてこれが原因に擬すべき異常を發見することの出來ぬ場合,これを差當り膀胱神經症と名付けて整理されるものであるが,これには眞に神經症と考うべきもの即ち患者が神經質であるとか,恐怖心に捕えられている結果發現した症状なることの明かなものと,然らずして單に原因が差當り見出せないものとが雑然と含まれ記載されているようである。したがつて,後者の場合は,吾人の検査方法が進歩發展するにつれて,神經症なる名稱から離脱する運命にあるものである。膀胱鏡検査には,病變が發見されなくても,組織學的検査の行われた機會には,それが深在性の三角部炎なることがわかる場合があり,女子に於けるMarion氏の膀胱疼痛症も,結局は三角部深層の炎症性乃至は欝血性・充血性變化をその原因としているということで解決されるのである。殊に婦人に於ては,性器の炎症變化はいうに及ばす,子宮の位置異常の如き單純な變化が膀胱神經症というべき症状を發現し得るのである。これらは既に神経症といつて片付けるべきものではない。また神経性排尿困難と記載される一群も,神経症の一つと算えらるべく,これまたその限界のあいまいもことしたものである。稻田教授は,所謂膀胱神經症から膀胱三角部異常症なる疾患を獨立されているが,氏の論文を熟讀してみると,これとても膀胱神經症の範疇を脆するものではないような氣がするのである。
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