研究報告
屎尿の吸込み處理
田波 潤一郎
1
,
長嶋 恒義
1
1千葉大学医学部衞生学教室
pp.46-51
発行日 1955年9月15日
Published Date 1955/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201600
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緒言
都会に於ける屎尿処理は近頃愈く軌道にのり,問題とすべき点が少くなりつつあるが,農村及び中都市に於ては未だ合理的な屎尿処理が行われないところが多い。千葉県九十九里海岸地帯を観察するに,水田稲作地帯に於ては殆んど下肥を用いることがなく,麦作地帯に於いて堆肥及び追肥として下肥の使用が見られるが,堆肥の方法が不完全であり,屎尿使用時期が限られている関係上,屎尿消費量が限定されている。常時屎尿消費源として役立つているものは畑作地帯で主として野菜畑である。肥料溜の設備が粗雑であり,肥料溜使用の関心が薄いことは下肥使用の面からみて公衆衞生上重大な問題を残している。
水田地帯に存在する中都市に於いては常に屎尿処理問題に悩まされている。例えば私設業者の通常の方法は,予め畑作地帯の農家と契約して屎尿消費量を予定し,それに基いて一定数の家庭の汲取りを行い,必要量を畑作地帯にトラツク又は牛馬車を用いて搬送する。若し必要量以上に家庭屎尿の集荷が上れば余剰を荒地に撒布し,または小河川に投棄する。この際業者は需要供給の兩者より一定の金額をうけとる。地方公共団体の手で屎尿処理を合理的に行う計劃もある。
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