看護學講座
産科學
糸井 一良
pp.52-56
発行日 1949年5月15日
Published Date 1949/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906472
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母體の榮養に富める動脈血は脱落膜中の血管を通つて胎盤の絨毛間腔に來り絨毛血管に接觸する。此所で胎兒を養つた後の廢殘物を含有する靜脈血が臍帶を通つて絨毛血管に來るから此の簿い絨毛の膜を通して互に榮養物乃至酸素と廢殘物乃至炭酸瓦斯との交換をする。妊娠中呼吸も消化も營む事の出來ない胎兒は胎盤を介して母體から榮養を受けて發育するのであるから胎盤又は臍帶に故障が起れば胎兒は速かに死亡する。
臍帶は胎兒の臍輪から出て胎盤の胎兒面に附着する長さ50乃至60cm太さ小指程の索状物で,輕度であるが繩の如く捻轉して居る。捻轉の動機は臍帶血管の發育が其れを取卷く羊膜鞘の發育より良く,臍帶血管の中でも臍靜脈の發育が臍動脈の發育よりも佳良である事と,他方胎兒の運動等の理由によつて起る。捻轉の方向は多くの場合左方に捻れて居る。臍帶を形成するものはワルトン氏膠樣質と云ふ白色半透明の膠樣物質であるが,其の主役をなすものは其の中に走る1本の臍帶靜脈管と,2本の臍帶動脈管である。而して臍帶血管では他の場所の血管と異り,臍帶靜脈管中に動脈血が流れ,臍帶動脈管中に靜脈血が流れて居るのである。臍帶の最外層は羊膜鞘を以て被われて居る事は前述の通りである。
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