看護學講座
婦人科學
糸井 一良
pp.45-55
発行日 1949年3月15日
Published Date 1949/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906447
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何れにしても此際去勢による缺落症状の起る心配がある事を覺悟しなければならぬ。
3.人工妊娠中絶法
人工妊娠中絶は俗に人工流産と謂ひ,其の方法には妊娠せる子宮腔内へ藥液を注入して陣痛を起させ,以つて流産の目的を達する非手術的方法もあるが,一般に使用せられるのは正規の手術操作を施すもので之れが安全である。妊娠初期例へば第4ケ月迄のものは子宮口を擴張し胎盤鉗子と内膜掻爬器を以つて胎芽並に附屬物を除去する事が出來るが,第5ケ月以上になると子宮頸管の擴張のみでは胎児娩出は困難であるから,ラミナリア,早産用ブヂー,メトロイリンテル(又はコルポイリンテル)等によつて陣痛を誘發し,一般分娩形式を取るか,或は頸管切開を施して娩出せしめねばならぬ面倒がある。而して此の際キニーネ,腦下垂體後葉製劑等の陣痛催進劑を併用する場合が多い。從つて妊娠後半期を遇ぎた者で大した疾病のない限り妊娠末期まで待つて自然分娩をなす方が健康の爲めにはよい。人工妊娠中絶は決して簡易無害のものではない。統計によると二次的不妊症の大部分が流産時の障碍に基くと謂はれて居る。自然流産の場合でも同樣であるが人工流産の手術を受けるものは設備の完全なる場所で,經驗のある專門家に依頼せねばならぬ。民間に於いて通經藥と稱して販賣せらるゝ諸種の堕胎藥は母體に對し有害にしてあれ決して效力はないものであるから使用しない方がよい。況んや堕胎器具の私用によつて生命を睹すもの有るは誠に寒心に堪へない。
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