看護學講座
婦人科學
糸井 一良
pp.27-34
発行日 1948年9月15日
Published Date 1948/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906376
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第二講 月經の生理と異常
月經の生理
卵巣の内分泌機能が一上一下絶えず律動性である爲め婦人の生殖生理も亦常に規則正しい周期を持つて繰り返さるゝものである。之れを如實に物語るものは月經である。何の苦勞も知らない小鳥の樣な快活な少女の胸に一度は與へないで止まない紅い血潮のシヨツクこそは生殖と謂ふ尊い婦人の天職に對する準備の整つた事を告げ知らせる曉鐘の音であつて之れを月經の初潮又は初經と謂ふのである。閉經期に更年期症状の起る如く初經期に於いても第二次性徴の發現と同時に感傷的となり動もすれば常規を逸する樣な行爲を爲すものがあり,又更年期頃に惡性腫瘍が起り易い樣に初經期年齡に結核の樣な疾患に罹り易いものであるから初經期と閉經期とは實に婦人にとつては一生の二大危機と謂はねばならぬ。
初經の年齢は種々の事柄によつて影響せられるもので,地方的にも人種により,氣候によつて差異があり,個人的にも文化により,境遇により,健康によつて遲速がある。日本婦人の初經は數え年15歳(平均滿14歳8ケ月)であるが,アイヌ族15歳2ケ月,琉球人16歳,支那人16歳7ケ月,白人滿14歳等が報告せられて居る。氣候が影響する事は疑ひない所で一般に熱帶の居住者は大多數12,3歳で初經を示し,印度や亞弗利加では10歳以下で既に之れを見るものが可成あるのに寒帶地方では16歳以下で發現するものは稀れでノールウェーでは17歳,プラントでは18歳と謂はれて居る。
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