看護學講座
婦人科學
糸井 一良
pp.40-48
発行日 1948年10月15日
Published Date 1948/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906389
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第三講 女性器の發育異常及び位置異常
女性器の發育
人體の諸臓器中その發育異常によつて起る畸形は女性器に於ける程多種多樣なものは他にない。而して性器の畸形を知る爲めにはその發育經過を知る必要がある。如何となれば性器の畸形の大部分が發育異常から發生し,しかも發育の長い經過中にあつて其の時期の異るに從ひ種々の畸形が生する爲めである。性器の胎生的發育の初めは泌尿器の發生と密接なる關係を有し,未だ胎兒と名付けられない胎生5乃至6週頃の胎芽の時期に於いて早くも脊柱の兩側で躯幹の凡そ上3分の2の部に原腎(又はウオルフ氏體)と云ふ細胞の集りが出來,その後間もなく其の内側に上皮細胞の肥大した原始生殖細胞なるものが生じ,續いてそこから下方に向ひ左右兩側のミュルレル氏管と謂ふ細胞の索状物が出來て驅幹の下端即ち骨盤の下部まで延びて來る。之れが將來内性器となる基を作るのである。勿論其の頃には未だ男女の性別は認められない。胎生7乃至8週頃に至ると兩側のミユルレル氏管は下方に於いて相癒合し,第3乃至第5ケ月の胎児となる頃には左右の原始生殖細胞の部には卵巣を,又ミユルレル氏管の上方で癒合しない部には左右に卵管が出來るし,更に下方の癒合せる部分には子宮及び腟が出來るのである。而して躯幹の成長するに従ひ内性器け次第に下降し,胎生6ケ月頃には骨盤内に位置を占める様になる。
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