発行日 1949年3月15日
Published Date 1949/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906446
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結核初感染後に繼發する胸膜炎はひじように多い疾患とされている。しかもこのいわゆる特發性胸膜炎患者のある者は,さらにひきっづいて肺結核をおこしてくる。いま手じかな論文岡田高廸氏「日本臨牀結核・第4卷・第6號」に微してみると,退院時,胸膜炎が治癒ないしは輕快した者だけについて考えても10人のうち3人ぐらいは結核になることを知るのである。さらにまた同氏の調査によれば,肺結核患者322名中,既往症に胸膜炎を有する者64名を算しこれもだいたい10人に2人の割合となつている。
以上述べたことがらは,いまや醫學の常識となつているが,この一見平凡にして常識的なことが,衞生知識のレヴェルの低い農村では,あんがいかえりみられていない實状である。したがつて,こういう地方では、とくに陽性轉化(以下「陽轉」と略記する)時と特發性胸膜炎恢復期に於て,患者はもちろん,患家に對してもただしい生活指導を與えると同時に發病豫防を強調することは,繼發肺結核豫防上大きな意義をもつものと考えられる。なにも目あたらしいことではないが,さいきんわたくしは,上述の意味で,保健指導にあたるわたくしどもがもういちど反省してみなげればならないきわめて適切な例を經驗したので,かんたんながら報告し,みなさまの御批判と御指導を仰ぎたいと思う。
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