看護學講座
婦人科學講座
糸井 一良
pp.32-35
発行日 1948年8月15日
Published Date 1948/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906365
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第一講 性徴と卵巣内分泌
性徴とは性的特徴の意義であつて男女兩性に特有の目標となる身體竝に精神上の生理的状態を謂ふのである。生殖腺中の精蟲を造るものが男性生殖腺即ち睾丸であり,卵を宿すものが女性生殖腺即ち卵巣である。斯の如き生殖腺の相違が性別の根本をなすものであるから之れを第一次性徴又は主要性徴と謂ふのである。而して男女の性別は兩生殖細胞の癒合即ち受胎當初から既に將來男女の別に分けられるべく決定づけられて居るものであるが,出生後幼年期,小兒期等に於いては單に生殖器の形態的相違を現して居るばかりで肉體的にも精神的にも特別の差異は認められないのである。子供心に何の差別もなく共に遊び戲れて居た小さな男女が14,5歳の年頃になつて男子は男らしく筋肉逞しく勇敢になるに反して女子は女らしく肌理細かく,曲線美を現し温順で羞み勝ちとなり,心身共にはつきりと區別が出來る樣になつて誰でも所謂春期發動期(思春期)なるものを一度は經驗するのである。此の樣な生殖に直接關係のない性徴を第二次性徴又は附帶性徴と謂ふのである。此の第二次性徴に於ける肉體的外觀の變化は外陰部の脂肪沈着竝に色素沈着陰毛の發生,發毛状態音聲の變化,乳房の隆起等の他最も著しい發現は月經であるし,又精神的作用で特に著しい變化は性情竝に母性えの發現である。共に直接生殖には與らないのであるが併し性愛の上には重大なる影響を有するもので,從つて間接には生殖作用と離るべからざる關聯を保つものである。
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