発行日 1948年10月15日
Published Date 1948/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906388
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1.緒言
結核は代表的な社會的疾患である。個人が結核に感染し發病する場合,結核菌の侵入,その體内に於ける増殖,轉移等が病勢を左右する根本の條件であるが,そこにその個人的の生活樣式即ち勤勞と休養,住宅,榮養,經濟状態,衛生知識その他種々の生活條件が密接な關係を持つて病氣の豫後を左右するものであるし,このようにして發症し轉歸する結核症が,數多くの人に發生して社會的蔓延を見るについては,各地域職域,更にはその社會その國家の産業,經濟,衛生的教養,戰爭,天災等いろいろの社會的事情によつて,その消長が左右されるものである。それ故結核蔓延の多少はその國の公衆衛生状態の目安になり,ひいては文化水準の指標になると云うも過言ではない。從つて結核の豫防については,純然たる醫學的見地と,社會疫學的見地との兩面から考へてゆかなければならないし,こうして結核豫防對策を考へてゆくことは,一般公衆衛生の改善の一番よいサンプルとして味う價値があると信ずる。
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