看護學講座
内科學
橋本 寬敏
pp.60-61
発行日 1947年12月15日
Published Date 1947/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906272
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寄生蟲症
寄生蟲とは人體内に宿る蟲であつて,線蟲類の圓蟲,扁蟲類の吸蟲と條蟲が主なるものだ。肉眼では見えない蟲卵或は仔蟲が人の口或は皮膚を通して人體内に侵入し,その好む所にて成蟲に成る。血液を吸ふ昆蟲などが體につく場合には,痒いとか,痛いとか感ずるし,眼で見れば,直ぐ判るから,動物でも,野蕃人でも,それを追ひ拂ふのだが,寄生蟲は顯微鏡でなければ見えない程に微細な形をとつて,人體に侵入するのだから,學術的にその侵入經路を知つて,それを防がねばならない。
我國には寄生蟲を體内に有する人々が實に多い。之は全く人糞を肥料に利用する農業方法が行はれて居るからだ。狹い國土を經濟的に耕作するには好都合だらうが,極めて不衞生的な習慣である。昭和12年内務省が發表した報告に依ると,581,809人の糞便檢査で202,204人即ち48.47%に寄生蟲卵を認めた。蛔蟲40.71%,十二指腸蟲10.43%,肝臓ヂストマ0.10%,住血吸蟲0.04%であつた。蛔蟲と十二指腸蟲が主なるものだが,農村には殊更多い。
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