看護學講座
内科學
橋本 寛敏
pp.36-47
発行日 1947年8月15日
Published Date 1947/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906225
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外傷性神經症 頭部に外傷を受けて,脳震盪を起すと,一時失神するが,死なずに囘復すると,後に精神症状,神經症状が貽ることがあゐ。實際に腦の挫傷や出血があれば,知覺,運動の障碍,癲癇痙攣,失語症等がある。又精神症状としては,記憶力減退,作業能率低下,幻覺,興奮の發作もある。
ところが頭部の外傷と限らず,身體の何所の外傷でも,交通災害,工場事故等の後に傷が治つた後に永く色々の症状を訴えて醫者から離れない患者がある。頭部には全く被害がないにも拘らず,精神状態が永く平常に復さない。之を外傷性神經症と云ふ。之はヒステリーや神經質と同類の病氣である。一度,戰慄する恐ろしい經驗即ち精神的外傷を受けたので,そのあとが殘り,おびえて,憶病になり,體に何かかくれた重大な病變があるのではないかと不安に感じ,僅かの異常感覺をも重大視して,苦情を訴へるとも思はれるが,一面には,災害賠償,傷害手當などを十分に支拂はれない不滿があり,それが根元となつて,精神が亂れて居る場合もある。元氣がなく,憂鬱で,仕事をする氣が全く無くて,唯色々の症状を訴へて,醫者を煩はすのを日課として居る。
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