看護學講座
内科學
橋本 寛敏
pp.21-28
発行日 1947年6月15日
Published Date 1947/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906207
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内分泌疾患
微量でも著しい生理作用を發揮する物質を分泌して,血液(或は淋巴液)に送りこむ腺がある。普通の腺は分泌液を排出管によりて體腔内に或は體外に出すのだが,今こゝで問題にして居る腺は,資材を血液より採り,分泌物質を再び血液に送り歸すのである。それで内分泌腺と謂ふ。分泌された物質は血液によつて運ばれ,體内を巡り,特殊の器官或は組織を刺戟して,その生理的機能を促進する。それでホルモンHermoneと稱した。或る内分泌腺の分泌成分は抑制する役目をするものもあるが,之をカローンChaloneと稱して區別した。但しこの名稱はあまり用ゐられずに内分泌物質を一般にホルモンと言ふ傾向となつた。ホルモンは正常なる發育成長,新陳代謝を推進し,調節する等健康を保つには缺くべからざるもので,その分泌が不足し,或は過剩になると,正常なる生理作用は營まれなくなつて,疾病を起し,不具廢疾となり或は時として死に至る。斯うゆう意味で,ヴィタミンと相似て居る,ヴィタミンは榮養素として外界から體内に攝り入れる物質だが,ホルモンは體内で産出される差異がある。ホルモンを化學的に見るとステリン系統の化合物で油脂溶劑に溶けるものと,蛋白質系統の化合物で酸類を以て可溶性化合物として水に抽出し得る物とある。性ホルモンはステリン系で,アドレナリン,サイロキシン,インシュリン等はアミノ酸,蛋白質系の物質である。
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