看護學講座
内科學
橋本 寛敏
pp.52-61
発行日 1948年5月15日
Published Date 1948/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906331
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自然體力の増強 既に體内にある病原體を人工的に殱滅することは誠に望ましいことだが,之が容易でない。多くの傅染病に對しては未だ效果のある藥劑が見つからない。濾過性病原體に由る傳染病も數多いがこの病原體は生きた細胞の内に深く侵入する性質があるので,既に發病した後には,如何なる藥も血清も效を奏さないのが常である。これが恢復するには,體内に發生する自然の免疫力に依る。
前に述べた色々の藥劑も大抵病原菌の發育を阻止するだけであつて,之を體内で殺滅する程の力はない。最後の「とゞめ」を刺すのはやはり體に自然に備はる殺滅力に依らなければならない。斯くして體内の病原體が死滅したとしても,既に害を受けで,變化し,破懷されたる組織を掃除し,之を再生するには,如何にしても,自然の再生力に依らなければならない。若い人などでは,體の再生力が強いので,病原體さへ滅殺すれば傅染病は直ぐ治る樣に誤解させ易いが,再生力の乏しい老人或は衰弱した人では,上述の特效藥を用いても,病氣が恢復しないことも稀でない。
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