看護學講座
個人衞生
橋本 寛敏
pp.75-77
発行日 1947年1月15日
Published Date 1947/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906176
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日々の心構え
動物界で人間ほど大脳の發達して居る動物はない。大脳の重さと體重の比は人間が最大であり,大脳の重さそのものも象と鯨を除けば人間のものが最大だ。大脳の働きである精神作用の最も良く發達して居るのが人間の特徴である。高級なる精神あるが故に人間は萬物の靈長なのであるから,人間らしく生きるためには,精神の健康を保つことが第一である。
人間の強さは精神にあるが,同時に人間の弱點も亦こゝにある。精神機能に一度狂ひを生すれば,人間は實にみじめな者に成る。而してやゝもすれば狂ひを生する。日本には25萬人以上の精神病者と150萬人以上の低能者があると云はれるが,それ程ではないが,普通とは異なる性格を有ち‘精神が過敏で亂れ易く,自分も苦しさが,他人にも迷惑を掛けがちの人はどれ程あるか知れな。いそうゆう人々は,不安定な世の情勢不遇な境遇に遭遇すると益々の精神の變調を呈し,その生活は常規を逸し易く,家を亂し世を亂す原ともなる。斯の樣な過敏で疲れ易い,變つた性格は,遺傳に由ることが多く,又腦病を患つたこと,年齡,酒類麻薬の濫用にも關係するが,その人の境遇に支配されることが甚だ多い。精神的環境に順應,適應するかせぬかにより,精神の健康が著しく左右される。それには,日々の生活をなす精神の態度が極めて重要な意義がある。それで精神の健康を保つために大切な日々の心構えを次に述べる。
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